が輩の説教などど

 それから、近所で噂を聞くこともなかったので、
 威嚇行為をしなくなったのだろう。
 我が輩の説教は、無駄にならなかったように思われる。
 なかなかに殊勝である日本租樓

 それにひきかえ、ハトは我が輩の説教などどこ吹く風である。
 絶対に聞いていない。
 人の話を聞かない馬鹿である。
 図々しいばかりで、可愛気というものがない。

 さて、我が輩がぼろいアパートの二階に、
 わび住まいをしていた時のことであった。
 窓を開けると、目の前に隣の一軒家の切り妻屋根が見えた。
 有り体に言えば、それしか見えなかった。
 休みの日など、日がな一日窓の景色を眺めても、屋根である。
 だが、スズメどもが遊びにきて、我が無聊を慰めたものであっ上環通渠た。

 切り妻の端を、
 てっぺんから下に向かって、勢い良く駆け下りることをしていた。
 一羽ずつ、きちんと順番を待って、やる。
 結構な勢いで走る。
 たまに、足を滑らせて、途中で落ちるのがいたりする。
 奴らは翼を持っている。
 地面まで落ちる前に、体勢を立て直して飛び上がる。
 そんな遊びを見せてくれた。
 観客は、順番待ちのスズメと我が輩である。

 スズメの全力疾走は、
 吃驚というか、可愛いというか、
 珍妙にして 摩訶不思議な光景であったことよ商務式公寓
 あなおかし