かりの人が言う

「待ってくれ。 その他人事(ひとごと)な言い方は、 つれないではないか」
「他人事ですから」
「前に言いましたよね。
 妻にするなら、 命の恩人に決めていると」
「ですから、 砂々姫様とお幸せに脫毛 學生!」
「私を、 じゃじゃ姫に押し付ける気ですか。 酷い」
「酷いのは誰ですか。 盃事を済ませて間もないというのに」
「だあって、 あれはあれだし」

 あまりの言い草に カッとした真咲は、 今度こそ殴ってやろうとして振り返った。
 殴るには近すぎるところに、 葦若の顔があった。
「うっ、 それが、婚礼を終えたばかりの人が言う事ですか!」
 仕方がないので、 怒鳴った。

「婚礼?  誰が?  誰と?」
「宰相様と砂々姫様が祝い事をなさったのは、 つい先日じゃないですか。
 この薄情者!」
「軍馬の取引が上手くまとまったのだから、 祝いくらいしたいではないか靈恩教會
 桜子皇女と幸真千皇子が ご無事だということは、
 陛下から こっそりと教えてもらってはいましたが、
 世間的には まだ行方不明。
 宮中で祝うのは はばかった方が良いだろう、 という判断から、我が屋敷で行ったのです。
 何もやましいことは…… あっ、 やきもちですか?」
「や、や、や、やきもちって何ですか、 それこそ、 意味が分かりません」
 婚礼ではなかったのか という驚きを、 真咲は かろうじて飲み込んだ。

 世間の噂はともかく、 真神門の当主である背衛は 知っていたはずだ。
 きっと、 姉の花澄も知っていたに違いない。
 噂を鵜呑みにして、 情報を確かめなかった自分の落ち度だ。
 誰を恨む訳にもいかないが、 何だか悔しい靈恩醫治